東日本大震災から7年。今でも言えないこと、今言えたこと。
私、彼氏にも友達にも、会社にも言えないことがあります。
関東に進学してから現在まで知り合った人の中で、本当のことを伝えているのは、たぶん数人。
普通の人にとってはなんでもないことなのですが、私は言う勇気が出ないのです。
「出身地」を伝える、ただそれだけのことなんですけれど。
私は自分の故郷が嫌いでした。
すごく田舎だし、考え方は古いし、噂はすぐ広まるし、本当に嫌いでした。
こんな場所から離れたいと、関東の大学に進学しました。
でも、外の世界に飛び出してみると、今まで当たり前のように見ていた故郷の見え方が変わりました。
海も山もある自然豊かな場所で、食べ物もおいしくて、人のつながりが強い暖かい場所だったなって。
故郷を離れて初めて、自分がいかに故郷が好きだったのか気づけたのです。
でも、私はそんな好きな故郷をみんなに言えません。
出身地を聞かれても、うまく誤魔化したりして。
何故だと思いますか?
理由は「私から離れて欲しくないから」です。
私の出身地は、福島県です。
みなさんも記憶にあるかと思いますが、忘れもしない2011年3月11日、東日本大震災が発生しました。
たくさんの方が犠牲になり、たくさんの方が住む家をなくしました。
私の故郷も、例外なく、この震災の中心にありました。
身近な人もたくさん亡くなりました。
私は、この震災で「実家」を無くしました。思い出の品も全部。
確かに悲しくて辛い出来事でした。
でも私が出身地を隠すのは、この出来事を思い出したくないからではありません。
出身地を話すと人が離れていくからです。
今ではそこまで話題に上がることもありませんが、「原発いじめ」を覚えていますか?
原発事故が原因で避難している人に対し、「放射能がうつる」「賠償金もらっているんだろ」などといった心無い言葉を浴びせられる等、原発事故が原因でいじめに合うことです。
これは学校という子供の世界で起きていたことが明るみに出て発覚しましたが、正直当時はいじめとまではいかなくても、大人の世界でも心無い発言が飛び交い、いじめに似たようなことはありました。
その典型的な例が、出身地を伝えると離れていくということです。
一度や二度ではありません。
多すぎて覚えてもいません。
でも、震災後出身地を伝えると、同情、軽蔑、困惑、様々な感情を向けられました。
その人たちはみな、さりげなく離れていきました。
嫌味を言われることもありました。
震災以降、出身地を伝えると新たな人間関係が築けなくなりました。
(時を同じくして、妹も震災いじめを受けていました)
私達は学習しました。
出身地を伝えてはいけないのだと。
特にその場限りの関係(美容師さんや友達の友達など)には出身地を伝えないほうが良いことを。
初対面でこそ良く聞かれる出身地。いつも「東北の方です」と誤魔化しています。
そして、結びつきが強くならないと出身地を伝えない方が良いということを。
ある程度仲良くなってから距離を取られる方が、よほど傷つきます。
自分がもう大丈夫、この人は離れていかないと思っていても、その確証はありません。
だから、彼氏にも仲の良い友達にも正確な出身地は今でも言えていないのです。
(福島県と言うことは伝えていますが)
だって、震災で実家がなくなったなんて、放射能の影響があるから故郷に戻れないなんて言えますか?
離れられるくらいなら、自分ですべて背負っていたほうが良い。
本当は、自分の大事な人にだけ理解してもらえればいいって思っていました。
でも、大事な人になればなるほど言えなくなっている自分が居ました。
離れて欲しくなさ過ぎて。
出身地を聞いて離れて行かれたのは、7年前の話です。
もしかしたら、7年たった現在は、私が考えているほど、みなさんは原発事故のことを覚えていないかもしれません。
それでも、半年前に出身地を言ったとき、その反応は7年前と大差はありませんでした。
やっぱり私は、出身地を言えません。
普段私はこんなに物事を恐れるタイプではありません。
でも、言えません。
でも、言えました。
7年たったから、福島県出身ってだけで人が離れていくって、今言えました。
それは一つの成長かなと思います。
いつか、胸を張って自分の出身地を言えるようになりたいと思います。